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バイオメカニクス基礎講座
「歩く・走る」を科学する

FEATURE 2016.04.21

 自分の走りを改善して、もっと効率のよいフォームで走りたい。正しい姿勢のウォーキングでトレーニング効果を高めたい。そんな思いを抱いているランナーやウォーキング愛好家はは少なくない。ここにご紹介するのはより少ないエネルギーで効率よく走り、正しいフォームで歩くためのティップスだ。まずは靴を脱ぎ、土踏まずに注目してほしい。ほとんど注目されることのないこの部位が、実は二足歩行の鍵を握っている。慶応義塾大学スポーツ医学研究センター准教授の橋本健史先生は、足の外科のスペシャリスト。走る・歩くといった動作を行う際の最も合理的、効率的な身体の使い方をバイオメカニクス、つまり生体における物理学という観点で研究している。それではさっそく、人間の最も基本的な行動である「歩く」、「走る」の基本原理についてお話しいただこう。

全ての動物のなかで土踏まずを持つのはホモ・サピエンスただ一種

橋本先生によれば、人間の足の第一の特徴が土踏まずであるという。全ての動物のなかで土踏まずを持つのはホモ・サピエンスただ一種。土踏まずこそが人間を人間たらしめるといっても過言ではない。というのもこのパーツ、歩く・走るという動作の原理を解析すると、人間の生活に欠かすことのできない複雑な機能を担っているからだ。まずは土踏まずの役割を紹介しよう。

アーチに隠されたスゴい機能

身体全体の面積のおよそ1%にすぎない足裏が全体重を支えられるのは、ひとえに土踏まずのおかげ。土踏まずには特徴的な二つの機能がある。一つはトラスメカニズム(三角構造)、かかとが着地する際に働く機能だ。トラスメカニズムは建築用語で、三角形を組み合わせた構造を指す。三角形はどの方向からの力にも変形しにくく丈夫であることから、宇宙ステーションやスカイツリーといった巨大建造物にも採用されているのだが、実は私たちの身体のなかにもこのトラスメカニズムがある。それが親指の根元、舟状骨、かかとの骨の3点をつなげた三角形、つまり土踏まずである。

【トラスメカニズム】

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かかとが接地して足裏に体重がかかると、三角形の底辺である足底腱膜(各足指の根元からかかとまでを覆う扇状の膜)がゴムのように伸びて足裏を柔らかくし、着地の衝撃を吸収しつつ分散してくれる。他の二足歩行動物でいうと、たとえば猿は完全な扁平足であり、速く走ることはできない。同じく扁平足の鳥類もまたしかり。彼らは人間のように効率よく長距離を走ったり歩いたりすることはできないのだ。

もう一つの機能がウインドラスメカニズム。ウインドラスとは船の錨を巻き上げる機械のことだが、かかとが地面から離れる際はこの巻き上げ機能によって蹴り出す力が生み出される。

【ウインドラスメカニズム】

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歩いたり走ったりしてかかとが地面から離れるとき、足底腱膜が引っ張られて土踏まずが収縮し、足裏を強固にするのだ。それによってアキレス腱の力(エネルギー)を親指の根元に効率的に伝え、強い力で地面を蹴り上げることができる。

トラスメカニズムとウインドラスメカニズムを司るのが、脛骨とアキレス腱の間から内くるぶしの後ろを通り、足裏で全ての足指へ付着する後脛骨筋腱だ。

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土踏まずのアーチ形成に欠かせないこの腱が、着地時の衝撃に備えて収縮し、足裏を強固にしたり、ゴムのよう伸びて足裏を柔らかくし、体重を分散させたりと、剛柔を自在に調整してくれている。かかと着地→つま先着地→かかとが離れる→足指で蹴り出すという一歩の流れのなかで、足裏を固くする→柔らかくする→固くする→柔らかくする、を無意識のうちに2回も繰り返している。

脱・扁平足でパフォーマンスアップ!

進化の過程で私たちの先祖はこのような複雑なシステムを足に備えるようになったのだが、それでもいまだ進化の途中にあることもまた事実。人類のおよそ2割は後脛骨筋腱が弱く、生来の扁平足であるという。またメタボや糖尿病などが引き起こす血流障害により後脛骨筋腱が弱まり、後天的に扁平足になる人もいる。扁平足の人は総じてかかと接地時の垂直方向の加速が弱い、つま先が地面から離れるまでの時間が長いという弱点がある。扁平足を改善するには、長腓骨筋(ふくらはぎ外側からくるぶし後方を通り足裏に至る)を鍛えるとよい。

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この長腓骨筋は後脛骨筋腱と相対する働きを行う筋で、後脛骨筋腱が土踏まずのアーチを作るのに対し、長腓骨筋は足裏を扁平にしようとする。互いの動きを牽制しあうことでバランスをとっているのだ。

このように、長距離を走ったり歩いたりすることを可能にした土踏まずのメカニズム。長距離を移動することができるようになったおかげで私たちは優秀なハンターとなり、大きな脳を獲得して現在のように進化した。縁の下の力持ち的パーツの重要性をご理解いただけただろうか。
現代において土踏まずをしっかり働かせること、それはパフォーマンスの向上を願う一般のスポーツ愛好家からアスリートにまで有効だ。土踏まずの機能をさらに高めるためには、まずは運動時の身体の動きをチェックすることからはじめよう。前後左右の身体のバランス、いかにうまく地面を蹴り上げ、また着地しているか。このようなランニングやウォーキング時の動作に含まれる要素を一つずつ解析し、改善方法を提案してくれるのがJINS MEMEである。

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JINS MEMEが目指すのは、全てのランナー、ウォーカーのためのプライベートスポーツドクターになることだ。みんなが自分だけのスポーツドクターを持つようになればスポーツ障害は減少し、全アスリートのレベルアップ、ひいては市民ランナーのステップアップやウォーキングを生涯スポーツにと考える愛好家の身体機能向上にもつながるはずだ。JINS MEMEを使って土踏まずを鍛えて、ランナー&ウォーカーとしてさらなるステップアップを目指そう。

(文:倉石綾子 / イラスト:清水将司)