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「重心」こそがトップランナーへの鍵 / コーチ 細野史晃

METHOD 2016.04.18

「苦しい」「ケガをする」「格好悪い」「完走できない」……これらのランニング“4K”に心当たりのある方も多いでしょう。「その原因はフォームにあります」とは、今回のメソッドを教えてくださる細野史晃コーチの弁。楽で効率的なランをするためには姿勢と重心がポイントで、脚の動きはさほど重要でなく、そればかりか「脚を動かしても前には進まない」というのです。
「より正確に表現すると、脚だけを動かしても人間は前に進みません。というのも、人間の体重の6割は上半身が占めています。上半身のほうが重いんです。そのため下半身(脚)から前に動かそうとすると上半身が取り残されてしまい、脚への負担が増すばかり。まずは重い上半身を先に前へ移動させること。このときの姿勢を『楽RUNポジション』と呼んでいます。これだけで動きが劇的に変わります」

「マラソンは上半身が9割」を提唱する 細野史晃さん

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今回の講師はプロ・ランニングコーチの細野史晃さんです。細野さんは著書『マラソンは上半身が9割』で話題となり、その独自のランニング理論には定評があります。JINS MEMEを活用して重心移動のコツを身に着ける「楽RUNセミナー」を開催しており、そこでは「ペンギン歩き」や「ペアキョンシー」などのユニークなドリルを行っています。そこでのポイントの一部を紹介していただきました。

下半身は“動く”もの、上半身は“動かす”もの

よいランニングフォームを身に付けるというと、一般的には腕ふりや足の着き方、肩甲骨、骨盤、アゴの位置など、じつに多くのポイントが指摘されています。ですが、細野流の「楽RUN」ではそれらの細かいポイントあえて意識しすぎないようにします。走りに集中するために、「楽RUNポジション」とその重心だけを意識するのです。

「物体は重心が移動することではじめて運動します。ですがこの重心移動はトップアスリートですら無意識のうちに感覚で行っていたりすので、私たち市民ランナーが意識して実践するのは少し難しいかもしれません。そこで手助けとなるキーワードが上半身なのです。

人間が動かず起立しているときの重心は丹田(おへその少し下)ですが、ランのときに前へ進みやすい重心位置はそのもう少し上。専門的に説明すると背骨の胸椎11番と12番のあいだとなり、『みぞおち』と『おへそ』の中間点あたり。ここにボールのような塊を感じられるようであればよい兆し。この重心を前へ引っぱるようにして、走ります。いわゆる骨盤や丹田に重心をおいたままだと直立の姿勢で安定してしまい、動作が行えません。

想像してみてください。ボーリング玉のような重いボールを両手で持ち、肩の高さまで持ち上げてまっすぐ前に伸ばします。すると前に倒れそうになりますよね。これを自分の体重移動で行うのです」。

この重心移動こそが細野流「楽RUN」のキモ。その手助けとなるドリルを教えていただきました。マスターすれば手脚をほとんど動かさなくても、脚が勝手についてくるイメージで走れるようになります。レッツ・トライ!

“上半身で走る”ためのエクササイズ

【重心の位置をつかむドリル】

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前述のように、「楽RUN」のポジションで走るには「おへそとみぞおちの中間」に重心がくるよう意識するといい。この部分に紐がくくりつけられており、その紐を通じてを斜めうえに引き上げられるようなイメージを持つといい。アゴは上がり気味となり、またお腹の少し上に力が入るように感じられるはずで、このポジションが正しくとれるとからだが自然と前に倒れこむ。するとコケまいとして反射的に一歩、脚が自然と前に踏み出されるはずだ。そのまま重心を前に移動させ、反射的な一歩一歩を連続させるとスムーズなランにつながる。

【ペアジャンプ】

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脚でからだを支え、跳ね返すという運動の連続がランにつながる。この跳ね返す感覚を掴むためのドリル。

2人1組となり、なわ跳びの2重飛びをするように連続してジャンプする。からだが全体をまっすぐの棒であるかのように意識。とくに着地の瞬間、ヒザを必要以上に曲げないようにする。アシストする人はジャンプする人が最高点に到達する直前にもうひと支えして、上に引き上げる。重心位置に手をそえてそこから引き上げるといい。地面からのリターンの力をうまく使えるとからだが軽くなったような感覚になるが、この感覚が感じられるようになるまで適当な回数その場でジャンプを続ける。

【ペアキョンシー】

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2人1組となり、走る人は両手を「前へならえ」をするように突き出す。ただし腕には力を入れず、キョンシーのように手首から先はダラーッと垂らす。この腕はさしずめランナーの重心につながっている紐。導く人はこの紐(手)をつかんで、走る人を前に引っぱるイメージで誘導する。ランナーは上半身から動くことになるので、転びそうになるはずだ。試しにその場で足踏みしてみてほしい。自然と前へとすすむ「楽RUN」となり、脚の力をほとんどつかわず移動するような感覚が得られるようであれば◎。

【ペンギンウォーク】

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ペンギンのハネのように両手をパタつかせながら歩く。両手はからだの横につけ、脚をつくタイミングでからだをパンッとたたく。このとき、いつもの歩き方ではなく前述の「楽RUN」の要領で歩くのがポイント。つまり重心の位置をコントロールすることで前へと歩くようにする。四肢のタイミングが合い、スムースな「楽RUN」ができるようになる。

細野×JINS MEMEセミナー

JINS MEMEを使った細野流「楽RUN」を身につけるためのセミナーが定期的に開催されています。

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参加者はJINS MEMEを装着してトレッドミルの上を走り、まず現在のランにおける重心の位置とフォームを測定・評価します。次にいったんトレッドミルをおりて、細野さん流ドリルを実践。上のイラストで挙げたドリルを含む、さまざまな目ウロコのドリルを行います。ペアで行うドリルもセミナーの参加者がそろうシチュエーションでは実践しやすく、ユニークな動きもあるため笑いが絶えません。

「『楽RUN』のメソッドはとっぴょうしもないものに聞こえるかもしれませんが、世の中で体幹ランニングなどと呼ばれているものと同じ部類の動きになります。大事なのはからだの中心部から動かすということですが、これは意識したからといっておいそれと実践できません。JINS MEMEでフォームのブレを測定できたからといって、その場ですぐに得点を改善できるとは限りませんよね。それと同じです。

そこで、意識すべきポイントを“上半身から動く”に一本化してあげるといいんです。JINS MEMEでの測定スコアも改善されるはずなので、試してみてください」

(文:礒村真介 / 写真:三浦咲恵 /イラスト:岡田丈)

細野史晃(ほその・ふみあき)

細野史晃(ほその・ふみあき)

Sun Light History 代表 1985年生まれ。都立小石川高校、国立埼玉大学、株式会社リクルートHRマーケティングを経て、ランニングコーチとして独立。中学から陸上競技を始め、高校から三段跳へ転向、大学時に日本ランキング入りを果たす。指導者がいない競技人生を経験し、よい指導者や指導法との出会いはスポーツをより豊かにするという思いから 指導者を志す。自身の経験から『楽 RUN メソッド』を開発。短時間の指導でも自己記録更新まで導く手腕には定評がある。スポーツの価値を高めるためのアドバイザーとしても精力的に活動している。主著「マラソンは上半身が9割」「マラソンは三日坊主で大丈夫!」