JINS-MEME.FIT

トレイルランナー 松島倫明 / ランニングが生活そのものを変える

PEOPLE 2016.02.23

人類にとって走ることが本能的な行為だと説き、トレイルランの魅力を広めた世界的ベストセラー『BORN TO RUN』。この書籍の日本版を手掛けたのが編集者・松島倫明さん。自身も移住した鎌倉の地で、トレイルランを楽しんでいる。ランニングや移住によって、ライフスタイルがどんな変化を遂げたのか。さらに、自然の中を走ることと先端テクノロジーを用いたギアJINS MEMEがどう結びつき、ランライフを豊かにしてくれるか。編集者ならではの鋭い視点で語ってくれた。

『BORN TO RUN』日本版を編集してトレイルランナーに

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走り始めたのは約7年前。そもそもは「出始めたお腹を凹ましたい」という体重管理のためで、ジムで30分ほどランニングマシーンで走る程度だった。しかし『脳を鍛えるには運動しかない!』という本を手がけ、ランニングを含めた有酸素運動が脳細胞を育て、生産性を上げるという最新の科学研究に影響を受け、松島さんのランは、痩せるためだけのものからポジティブなものへと変わっていった。そして、人類が走ることの意味を根源から追究した『BORN TO RUN』と出合う。壮大なスケール感で疾走するこの物語に、世界中の多くのランナーが意識を変えられたが、編集を担当した松島さん自身もそのひとりだ。


「『脳を鍛えるには運動しかない!』で、走ることが脳にいいというインプットはすでにあって、『BORN TO RUN』の英語の出来立てのゲラを読んで、メキシコの荒野や炎天下のロッキー山脈を走るこんな世界があるんだという驚きがありました」


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『BORN TO RUN』の刊行と前後してまずはロードを走り始め、フルマラソンでサブ4を達成すると、いよいよトレイルへ。そして2013年には、『BORN TO RUN』のクライマックスに登場する、メキシコの辺境の地で開催される50マイル=80kmのレース「Ultra Marathon Caballo Blanco」に出場。日本から仲間8人で参加し、現地の先住民族タラウマラ族と共に走り切った。


「僕にとっては初めてのウルトラトレイルレースで完走できるか不安だったのですが、仲間と一緒に走って、トレイル上でも他のランナーたちと励まし合いながら完走できたことで、トレイルの楽しさに一気にはまりました」

常に走って移動するタラウマラ族にとって、走ることは生活そのものを意味する。彼らと共に灼熱のメキシコの荒野を走ったことで、否応なしに走ることの意味をもう一度問うことになった。


「タラウマラ族は、健康のためにわざわざ走るわけでも、レースのために走っているわけでもありません。では、なぜ彼らは走るのだろうという根源な問いを抱き、僕もランニングをレースとしてだけではなく、ライフスタイルとして考えるようになりました。そして、もっと身近に生活の中でトレイルを走りたいという思いが芽生えてきたんです」

トレイルを身近に感じることができる鎌倉に移住

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そして、一念発起して妻と二人で鎌倉へ移住。今の住まいからは走って3分で、裏山のトレイルに入ることができる。生活の中でシームレスにトレイルランができる最高の環境だ。


「東京に住んでいた時は、妻は自宅の周りを一緒に走るぐらいで、わざわざ電車に乗ってトレイルランに行こうとまではしなかったので、すぐトレイルがある暮らしだったら一緒にトレイルを走れるかなと思いました。朝起きて寝間着のままですぐにトレイルを走りたいという思いも、移住のモチベーションでしたね(笑)。ふだんは裏山をパッと1時間走るくらいですが、週末ともなればここから逗子、葉山までも走れますし、この環境はすごく気に入っています。


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移住しての変化はまず、起床と就寝が2時間前倒しになったこと。それと、折々に自分たちで作る食事がほんとうに美味しくなりました。地元で“レンバイ(鎌倉市農協連売所)”と呼ばれるファーマーズマーケットや地元のフィッシュマーケットがあって、何でも食材が揃っている東京のスーパーとはまるで違うんです。その季節に採れた地物しか置いていないから、大根ばかりという時期があったりするんですが(笑)、自分で決めたメニューに沿って旬でもない食材を買い揃えるのではなく、マーケットに並ぶ旬の食材を見てからそれで作れる料理を考えるというふうに、食に対する態度はまったく変わりましたね。移住するからには庭がある家がいいとも思っていて、今、庭で畑をやっています。と言っても、基本は「自然農法」という名の放任なんですが(笑)、それでもケールやルッコラなど葉もの野菜など、やっぱり味が濃くて美味しいですね」

JINS MEMEには心と身体を繋げる可能性がある

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「不整地を走りながらジャンプしたり、斜面を駆け下りるトレイルランは、体幹が大切なので、身体の軸がブレていないかどうかがわかるのはスゴイですね。JINS MEMEはまだトレイルランでは実用化まではいっていないようですが、日常のランニングでそうした体のブレが可視化されるのはいいですね」


「ランニングがライフスタイルを変え、こうやって生活そのものを変えたことで、ランに対するスタンスも変わりました」と松島さん。JINS MEMEにも、ライフスタイルをがらりと変える可能性を感じたという。『脳を鍛えるには運動しかない!』『BORN TO RUN』と編集を手掛け、トレイルを走るようになり、「身体こそが脳とのインターフェイスになっている」と実感。では、心と身体をどう繋げていくか。その役割を果たすのがテクノロジーではないかと予感している。


「もともとテクノロジーは、あらゆる人に対して開かれていて、私たちをより自由にしてくれて、能力を拡張してくれるもの。6軸センサーのついたウェアラブルガジェットのJINS MEMEが、これまでのようにランナーが単に距離や速さの記録を取って『月間目標何百kmを走った』という世界から、身体をインターフェイスにしてその内側を知ることで、『昨日の自分はどんな状態だっただろう?』『最近の生活のクオリティはどうだろう?』、ひいては『どんなスタイルで生きていきたいのだろう?』といったところまで、日々、自分と対話できるようなガジェットであれたら素敵ですよね」


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敏腕編集者の松島さんが今、注目しているのは “マインドフルネス”というキーワードだ。


「“マインドフルネス”は、今ここに在ることに気づく瞑想法です。不整地を走るトレイルランでは、足が大地を踏みしめる感触、木々の葉が揺れる音、頬に感じる風、土や若葉や花の匂い、鳥や小動物の鳴き声、ちらちらと視界に入る木漏れ日……そうした一瞬一瞬の感覚に気づき、受け入れながら走るので、まさにマインドフルネスそのものなんです。鎌倉は、観光地やお寺を巡り買い物をして帰ってしまうにはもったいない素晴らしいフィールド。そもそも鎌倉時代に禅の文化がここで始まったわけで、今に息づくその貴重な文化とも接続させながら、これからもライフスタイルとしての「マインドフルラン」という価値観を打ち出していきたいですね。」



(文:小泉咲子/写真:松田正臣)

松島倫明(まつしま みちあき)

松島倫明(まつしま みちあき)

主に翻訳書を手掛ける書籍編集者。編集業に留まらず、版権獲得からプロモーションまで幅広く行い、『BORN TO RUN』を大ヒットに導く。これまで発刊した代表的なタイトルに、クリス・アンダーソンのビジネス書『フリー』やジョナサン・サフラン・フォアの小説『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』など。最新刊は、アメリカのビジネスリリーダーが実践する瞑想法の効果を最新科学で裏付ける『マインドフル・ワーク~「瞑想の科学」があなたの働き方を変える』(すべてNHK出版刊)。